2011年12月17日土曜日

ビジュアルで惹きつける日本史

関東圏の高等学校で授業改善に取り組んでいらっしゃる先生にお話を伺ってきました。
専門学校を含む進学率は約8割、4大進学率は約5割で、数年前から国公立クラスを作り、近年は国公立大学合格者も連続して複数名輩出しています。

【地歴を担当されているE先生 主に日本史について】
○学力向上実感が上がった理由について
受験対応の授業にしている。
プリント中心の授業で、毎年作り替えている。穴埋め形式。
国公立クラスができてから受験問題集を読むようになった。
これまではわかりやすい授業を意識していたが、
国公立クラスができてからは結果を出さないといけないので傾向を調べた。
受験に役に立つことを意識して言ってきたので上がったのかもしれない。

○わかりやすい、意欲がでる、関心をもった、などの数値も上がっているが
ビジュアルを意識している。
教科書はバイブル的に使っている。山川。図録も準拠教材の山川の詳説日本史図録にした。これまでは東京書籍。
朝日新聞社からでているマンガ日本史を2年前から使う。
人物カードが付いているので、これを300倍に拡大して、A4サイズにする。
450人分ある。カードになければネットから画像を取ってくる。
特に現代の人物はネットで収集した画像が多い。

これを黒板に貼って人物の関係図を描きながら説明する。
生徒には白黒コピーのものを配る。
マンガは生徒は購入しない。図書館でも置いていない。絵
本のように、生徒にページを見せながら読み聞かせる。
「日本はじめて物語」も使う。
これらを使って会話形式で授業を進める。







○授業の展開
最初に教科書を自分ができるかぎり速いスピードで読む。
生徒には読ませない。時間がかかるし、他の生徒も聞かないことがある。
教科書は欄外も読む。重要な事象があれば図録を開く。
教科書って実は太字が重要なわけではない。点差がつくのは欄外や図録に載っていること。太字は中学でやっている。
逆に教科書と図録に載っていない内容は難問なので覚えなくてもいい。

国公立クラスは「2.26事件って知ってる?説明してみて。」と説明させる。論述対策。
推薦入試が多いクラスはこちらで説明して、次の授業で復習。
「西郷隆盛はどこ出身?」など、一問づつ生徒に聞いていく。
板書の人物関係図などは板書せず、配布したプリントをノートに貼る。B4。
ノートチェックをすると国公立クラスは説明したことも書き取る生徒が多い。

穴埋めはオレンジの蛍光ペンで。赤だとうっすらと映るので。
板書に時間がかかりすぎて説明する時間が減る。
板書を中心にしている先生もいる。一長一短。
国公立クラスは板書すると内容が追いつかない。
一般入試をしない生徒が多いクラスだと板書させたほうがいいかもしれない。そうしたクラスでは授業スピードが速いわけではない。1コマで3分の2ページくらい。毎回最初の10分は復習。







○生徒の様子
授業のやり方は4年前とははっきりちがう、と自分でも実感している。入ってくる生徒の学力が上がったので自分のスタイルも変えた。楽しくわかりやすいというスタイルから変えた。
国公立クラスは河合の偏差値で60を超える。一番低い生徒でも52,3で、あまり点数が崩れない。毎回のテストの範囲を最初としているので、何度も同じところが範囲となることも効果があるかもしれない。
国公立の1期生には、特別な生徒がいた。筑波や慶応に合格した。ネットを見るのが好きで、家でも英語で話すような生徒。でも、この生徒に引きずられて他の生徒も明治とかにいった。この時に、河合塾などのノウハウを吸収した。教科書を速く読むというのもその影響。河合の石川先生が出している5巻くらいのものを一時期ベースにした。

一方、一般受験をしない生徒の多いクラスでは、いま世界史Aをしているが、すごくわかりやすい授業をする。教科書を読んで、線を引かせて、埋めさせて、1問1答をする。この流れを定着させている。内容をコンパクトにまとめ、あまり情報を多くしすぎない。でも結果は他のクラスよりもいい。イラストも3枚程度。国公立では10枚ほど出すが。地理も世界史と同じように情報を絞る。

(参考)河合塾講師 石川昌康先生
大学受験参考書
NEW 石川日本史B講義の実況中継①~⑤』(語学春秋社)
『マーク式基礎問題集 日本史』(河合出版)
『ウソで固めた日本史』(河合出版)
『誤字で泣かない日本史』(河合出版)

「日本史史料podcast」 日本史の史料を音読し解説しています(有料音声ファイル):http://www.ishikawaakiyasu.jp/podcast/podcast.html


○宿題
出さない。国公立はあえて出さない。好きな子は勝手にやる。出さなくてもやる。
逆に宿題をだすとそこしかしない。それよりも英語を伸ばす必要がある。
なのであえて宿題はださない。好きなところを好きなだけやる。

定期テストはセンターの問題を3分の1、
残りはMARCH以上の大学の過去問題を改変したものを出す。
これはきちんとお金を払って購入したデータベース。過去10年分くらい。
M大、R大とかっこの中に書いておくと生徒もどこの大学の問題かがわかる。

解説には時間をかける、1週間程度、最低でも3時間はとっている。すると傾向も見える。
このときに問題解説をする。マークの取り方など。
マークだけの大学を受けるなら漢字は覚えなくてもいいかもしれないが、
MARCH以上だと書かないといけないので漢字を間違えないこと、とか。記述のしかたとか。4択は、間違いを探せ、よりも正しいものを一つ選べの方がひっかけが多いとか。
年代整序は大きな流れよりも、図録の左上にでてるような小さな固まりを覚えることが大事。年代を細かく覚えるよりも流れで理解する、など。生徒も整序問題は自信があるという。
一方、昭和史は歴代の首相を最初から暗記させる。何をしたのか、なぜやめたのか。生徒は苦手な分野だが、よくでる。なので、最初にやってしまわずに後半からじっくりやって受験に向けて仕上げる。

○感想
子どもの変化に柔軟に対応し、クラスの状況に応じて様々な引き出しからそのクラスに合った方法をとっている柔らかさが印象的でした。様々な情報や資料を収集し、それをきちんとまとめて提示している様子が授業のお話やプリントから伝わってきます。必要とあれば、学校の外から積極的に学ぶことに躊躇しない姿勢も印象的でした。
また、クラス全体のことを考え、あえて宿題を出さないこと、それでも予習復習が伸びていることは、授業でモチベートをかけることが生徒の自主的な学習にとってとても重要であることを再確認させてくれました。

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