2011年11月29日火曜日

数学での授業改善 自律した学習に向けて

授業改善の事例で多くの先生が知りたいとおっしゃるのが数学についてです。

そこで関東圏のある中高一貫校で授業改善に取り組んでいらっしゃる先生にお話を伺いました。
東大、早慶上智の進学実績を持つ進学校での事例です。

赴任したばかりのころは、非常に生徒が元気で、文化祭などはとても盛り上がったということです。
他の進学校でも同じような雰囲気だったという話を伺います。

一方で、生徒は自律していて、自分達で勝手に勉強するという雰囲気もあったようです。
今はもう少し落ち着いた雰囲気ということです。

予備校や出版社が行う研修会によく参加する教員が多いとおっしゃいます。

以下、簡単ですがいくつかの授業技術についてお答えいただいたことを紹介させていただきます。



○発問
わざと間違えたり、不十分なところを残して生徒からの指摘を待ったり、
と多くの先生がするようなことをしている。

ただし、中学生に対しては言葉遣いを意識する。こちらの意図が伝わるように指示を丁寧にする。
高校生になるとそのへんがわかってくるので細かく言わずにすむようになる。


○授業スタイル
中1では規律面をしっかりする。授業を受けるのが当たり前、というように理解させる。
つまり、こちらがいろいろと工夫しているよ、と見せたり、
興味を引くような工夫を前面に出すようなことはしない。

そうすると、それが当たり前になってしまい、その後の学年で大変になる。
中1では、実際は工夫をたくさんするが、その工夫をしている、というのを生徒が感じないようにする。
つまり、勉強は自分のためにするのだ、ということを理解させる。


○ノート
ノートをとることに集中しすぎるな、という。
それよりも説明する「ことば」に耳を傾けて、理解することが大事。


○つまづくところ
つまづいても、基本は考えて自分で答えをだすことを奨励する。

教科書の最初のページのような概念を説明するところは、
どうあがいても生徒では理解できない部分があるので説明するが、
問題についてあれこれいうことはあまりしない。

解説はきちんとするが。基本的に突き放す。

小道具も本来であれば生徒が自分で工夫しないと学力が伸びないと思っているので多用しない。


○理解把握
中学や高1はとにかく机間巡視。その場でわからないところをなくす。

またできる生徒に他の生徒を教えるように指導する。

学力が低い生徒には丁寧に対応する。





いかがでしょうか。
つい、丁寧にやってしまいたくなるところを抑えて、
生徒の力をつけるために何が必要かを上位目的とする。
その大切さを気づかせていただきました。

2011年11月25日金曜日

優れた授業実践のための7つの原則

優れた授業実践のための7つの原則、というのをご存じでしょうか。
これは、アメリカの大学での教授法についてたった5ページで書かれたものなのですが、
その小冊子は1年半で15万冊売れた、ということです。
その内容は、以下の通りです。

  1. 学生と教員のコンタクトを促す
  2. 学生間で協力する機会を増やす
  3. 能動的に学習させる手法を使う
  4. 素早いフィードバックを与える
  5. 学習に要する時間の大切さを強調する
  6. 学生に高い期待を伝える
  7. 多様な才能と学習方法を尊重する
参考文献
Chickering, A. and Gamson, Z. (1987) Seven Principles for Good Practice in Undergraduate Education, AAHE Bulletin, March 1987, a publication of the American Association of Higher Education.

詳しい資料は、以下のページで読むことができます。
中井俊樹・中島英博(2005)「優れた授業実践のための7つの原理とその実践手法」『名古屋高等教育研究』第5号

なお、名古屋大学の以下のページも授業アンケートを用いてどのように授業改善をすればよいのかについて示唆が得られます。
「授業の基本 9章 自己診断から授業改善へ」

2011年11月21日月曜日

英語教授法

英語は授業アンケート後の討議や進学指導での話合いで、
よく意見が分かれ話合いが難しくなる場合があります。
英語の指導法がそれだけ多くあるということなのでしょう。

以前、英語科の先生に「英語の教授法についてわかる資料はないですか。」
と聞きますと、「サルでもわかる なんちゃって英語教授法」という資料を送っていただきました。
わかりやすかったので、ご紹介いたします。







スライド中で引用した学説に関する文献は、田崎清忠編(1995現代英語教授法総覧大修館書店、を参照ください。また、望月昭彦編著(2001新学習指導要領にもとづく英語科教育法大修館書店、も参考にしています。


(文中の言葉の説明)
•行動主義心理学:言葉は新しく習得するもので、言語教育は新しい習慣をトレーニングにより定着させるためのものである。
・構造言語学:人間には元々言語能力があり、文脈や背景知識(スキーマ)からその意味を理解する。このとき目標言語に特有なパラメータをリセットすることが言語教育の目的と考える。
•Direct method /gouin,phonetic,berlitz 外国語のみで教える、文法は帰納的方法で教える、言葉は母語と同じ方法で習得される 入門期の指導には有効だが、ある程度の母国語の使用や系統的文法指導の導入が必要
•phoneticなど発音記号をまず教えるのは、「英語が読める」という自信をつけさせ、英語学習に対する情意フィルターを下げる効果がある。情意フィルターを下げることがインプット仮説では大切な条件。
•oral method 規則(体系,code)と運用(speech)を区別した 両者を統合しようとしたパターンプラクティスは今日なおその有効性を認められているが、学習者が受身になることや、リスニング時間(インプット)が少ないなどの点を克服する必要が生じてきた。



2011年11月18日金曜日

選ばれる理由は授業にあり B先生の事例(3)


B先生の授業を工夫された事例を紹介するコーナーの3回目です。
今回は、B先生のデータ と 「ノート指導②」「センター対策」「生徒発言をうけとる」 という内容です。

●ノートの使い方指導を行う ②
使い方は見開きの左側に板書の写し、右側に生徒自身が感じたことや注意したいことを書くように指導している。あるいは、右側には、授業中に配ったプリントなどを貼るように指導している。
中学生ではノートで勉強する習慣がない生徒がいます。そのまま高校生になると、立ち遅れてしまう。
中学生の間にノートの使い方を覚えて、ノートの大切さがわかるようになると、高校生になったときにノートで勉強できるようになる
ノートの大切さがわかる生徒になってほしい、という気持ちから行っているものです。

●高校生にはセンター試験対策の冊子を配る
「これだけはマスターしよう」という意味の冊子。
先生のオリジナルの教材。

●生徒の発言をきちんとうけとる。
意見や質問があったらそれに対して誠実にこたえる
君のいっていることはこういうことなんだね、などときちんと確認する
  生徒が気づいたことをこちらに伝えてくれたら、「ありがとう」と感謝する


以上

2011年11月10日木曜日

選ばれる理由は授業にあり B先生の事例(2)

B先生の授業を工夫された事例を紹介するコーナーの2回目です。
今回は、B先生のデータ と 「板書・ノート指導アイデア」 という内容です。


B先生(社会科、地理・歴史科)

「生徒に思考力をつける授業」の好例

B先生のデータ (高等学校担当クラスのデータ)
授業満足度
06
07
08
09
10
学力向上
48%
47%
51%
57%
63%

※上記各項目の%数字は、単純な構成比を表すものではなく、各項目を調査するための4つの選択肢のプラス評価(選択肢1回答と2回答の比率の合計)-マイナス評価(選択肢3回答と4回答の比率の合計)という計算式から算出されたもの。

●難しい漢字は一画ずつ色を変えて、板書の字を書く。

漢字を覚えられない生徒がいるので、それの解決策として考えた。
中学生にはとくに有効である。
意識をしてその文字をみたり、書いたり、するようになる。

●色チョークを4色使う。
白  → 通常の板書
黄色 → 重要事項
赤色 → 最重要
緑色 → 旧帝大や早慶を考えるなら、重要。

●ノートの使い方指導を行う ①
通常よく使われるノートとして、A4サイズのものがある。
これでももちろんいいのであるが、コクヨのB5サイズのノートはよりいい。
分厚くなく、軽い。持ち運びによくフットワークがよくなる。なにより使いやすい。
枚数も普通は40枚あって少し分厚い。けれどもこのノートは30枚で薄い。
値段も少し安い。
1年に1冊ではおわらないけれど、新しいノートを使うようになると気分も変わる。
ちょっとした達成感もある。
ちょっとしたことであるけれど、重いと他の教科のものを含めると結構な重さになる
重さが気になることで障害になることもあるかもしれない。
このノートは、B5版を少しだけ大きくしたサイズでとても使いやすい。
    少しだけ大きくなっているため、B5のプリントを貼るのにとてもいい

次回もB先生のお取り組みを紹介します。

2011年11月9日水曜日

選ばれる理由は授業にあり B先生の事例(1)


B先生の授業を工夫された事例を紹介するコーナーの1回目です。
今回は、B先生のデータ と 工夫のアイデア紹介 という内容です。



B先生(社会科、地理・歴史科)

「生徒に思考力をつける授業」の好例

B先生のデータ (高等学校担当クラスのデータ)
授業満足度
06
07
08
09
10
学力向上
48%
47%
51%
57%
63%

※上記各項目の%数字は、単純な構成比を表すものではなく、各項目を調査するための4つの選択肢のプラス評価(選択肢1回答と2回答の比率の合計)-マイナス評価(選択肢3回答と4回答の比率の合計)という計算式から算出されたもの。

●板書の際、重要なところをわざと書かないで空欄にする。
そうすると、気づいた生徒はあれっと思って、その部分について、自分が間違えているのか、板書が間違えているのかを考える。そして、先生にいう。
この過程がとても生徒の勉強になるという。
年表や地図やグラフなどのプリントを多用し、その読み取りや重要なポイントなどを生徒に考えさせる。
中学生にも東大の問題なども生徒にプリントで配り、考えさせることもある。
(東大の問題とは生徒には言っていない。)
生徒は真剣に考えるようになる。
  このような過程で思考力がついてくるのではないだろうか。





2011年11月7日月曜日

授業改善者アンケート

授業満足度が高い先生はどのようなことを意識しているのかを知るために、
全国の学校を対象として、2009年の授業アンケート結果をもとに、
各教科で全国トップ10に入る先生がたにお話を聞いています。
対象となる先生の条件は、
①前期、後期とも、その教科において総合満足度が全国トップ10に入っている
②前期よりも後期の授業満足度が高まっている
という厳しいものです。

その条件にあった、関東圏のN高等学校の先生お二人から回答をいただきましたのでご紹介します。

○H.T先生(地歴)
1.2009年当時を振り返って、個人的に意識されていたことはありますか
>生徒にいかにわかりやすく説明できるかを心がけていたので、教材研究を欠かすことはなかった。

2.2009年前期の結果を見てから、特に意識されて取り組んだことはありますか
>教える内容は前年度に同じ範囲を教えているので大丈夫なのだが、もっとわかりやすくできるのではないかと前年度以上に教材研究を行った。

3.2でお答えいただいた取り組みについて、具体的に一つのクラスを選んでいただき、どのようなことをしたかを教えてください。
>1年A組の日本史では、パソコンで教える内容を詳しく調べ、エピソードを取り入れたり、黒板に絵を書いたりしてわかりやすくした。

4.2009年の時に、教科として取り組んだことはありますか
>1年A組は文理コース、2年G組は理系コースなので、定期テストにはセンター試験や大学入試問題の過去問題を必ず取り入れた。

6.2009年から現在まで、継続して意識されていることはありますか
>生徒がいかに自分に向いて授業に取り組んでくれるかを意識して、常に向上心を持って教材研究を行っている。

○H.J先生(技術家庭)

1.2009年当時を振り返って、個人的に意識されていたことはありますか
>特に2009年に限ってということではないが、常に、昨年度よりも分かりやすい、楽しい授業を行いたいと思っている。改善点があれば、内容なども含めて検討し、改善に心がけている。

2.2009年前期の結果を見てから、特に意識されて取り組んだことはありますか
>毎回質問内容を見直し、意識していなかったことを意識して行うようにしている。
質問をすることが少なかったことを考え、生徒に質問で声がけをした。
また、さらに興味を持たせるように工夫をした。

3.2でお答えいただいた取り組みについて、具体的に一つのクラスを選んでいただき、どのようなことをしたかを教えてください。
>興味を持てる生徒が増えるように、栄養の話しであれば、実際に食しているものや興味のあるもの、多くの人が感じられているからだの変化とともに話しをする。例えば、食べないでダイエットをすると、たんぱく質が体から取られ、筋肉が細くなる。そして、たんぱく質で出来ている髪の毛やつめに栄養が行かないので、脱毛やつめにたて筋が入ってしまう。やせた筋肉のせいで新陳代謝が低くなり、そのあと通常の食事をすると、太って、やせにくいリバウンドになる、など。
家庭経済の話しであれば、買い物の話しや海外旅行の話などをすることで、実際に使える授業となるように心掛けている。

6.2009年から現在まで、継続して意識されていることはありますか
>以前から、生徒の話しを聞くことと、どの生徒にも公正に接すること、指導を行う際に、基準を明確にし、ぶれないようにすることなどを心がけている。
常に授業アンケートを確認し、改善できるところを検討している。

7.現在、どのようなことを意識して取り組まれていますか

>上記の心構えをもとに、生徒をほめるように心掛けている。また、4月当初など、慣れないうちは、私のことを拒絶する生徒もいるので、そのような生徒との距離感が縮まるような言動を心がけている。

宗教科の授業の満足度を高めるには

私立学校はある宗教を建学の精神の基礎とされることが多いのですが、
授業自体はあまり高い満足度とならない、というケースもよくあります。

そんななかで、前期、後期とも全国の授業アンケートの総合満足度でトップ10に入り(2009年度)、かつ前期よりも後期の方が結果が伸びている、という先生にお話を伺ってきました。

○概要
神奈川県のY高校、Y先生
前期 15クラス570名 後期 15クラス558名 (1年、2年の全クラスを一人で担当)
伸びた指数 関心度 48→51  学力向上実感 0→26

1年 宗教とは何か 日本の宗教 聖書系の宗教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)
2年 仏教

月曜から木曜の1限から6限までをほぼ休みなく授業をもち、金曜・週末はお寺の仕事をされているということです。

○意識されたこと
2007年までは1年生のみを担当していたが、2008年に前任者が急な退職となり、以後1年生と2年生のクラス全ての宗教科授業を受け持つようになった。
当初は前任者のカリキュラムを踏襲し、難解な仏教用語や理論も教え、さらに般若心経の現代語意訳ということも授業で行っていた。
しかし、特に般若心経の講義においては、板書を終えて振り返るとほとんどの生徒が寝ているという状況が一度あり、生徒の理解力に即したカリキュラムに変更する必要性を感じた。そういうこともあり、色々と試行錯誤していたのがこの年。なので変化があったのかもしれない。

○どのような改善をされたか
基本的には「一般の生徒が聞いて役に立つ宗教的知識、仏教的知識を教えよう」ということ。例えば、善悪の判断。人を殺したり盗んだりするのは「なぜ」いけないのか。
仏教にはカルマ(業)という考えがある。自分のする行為が自分に返ってくる。なぜ悪いことをしてはいけないかと言えば、その悪い行為の結果が自分の人生に悪影響を及ぼすから。特に、確実に不幸になる10個の行為をしてはならない、ということを十善戒というが、そういう教えが仏教では説かれている。「生き物は皆幸福になりたいと思っているのに、わざわざ不幸になる道を選ぶのは、損ではないですか?」といったような話をする。生徒の身近な話題からそうしたことを伝える。ニュースでは連日盗みや悪いことをした話が流れるので、展開・応用のネタに困ることはない。

当然、仏教のプロを育てることが目的ではない。現代社会の中で生かすことのできる知恵などが身に付けばいい。宗教というと、うさんくさいとみられる雰囲気もあるが、そこから学べることを数多くある。幸せになるために、ただ祈ればいいという教え方はしない。祈り、信心と共に、日々の精進が必要と説く。正しい教えを知っているだけではダメで、行動に結びつかないと意味がない。

○板書の工夫について
板書の量が多かったので要点をまとめた。字の大きさも大きくした。書道をやっていたので書体も書道に近かったが、これを見やすい字体にした。また、しゃべる言葉や板書の用語が難しすぎないかどうかはいつも確認した。

○理解度把握について
ノートチェック。抜き打ちチェックにしているが、一定のサイクルで回収する。以前は800人分を試験期間中に集めてチェックしたが、夜に寝る暇もなかったので、時期をずらすようにした。担当生徒が400人弱の時は一言コメントもしていたが、とてもできない人数になったのでサインのみ。検の字とサイン(花押)。両方ともあればOK。△の出来なら検の字のみ。×の出来ならチェック。良い出来なら+やコメントをつける。
プリントは補助教材として資料を年に10回ほど配る程度。

○態度の悪い生徒への注意
基本的に、自分が「怒る」ということをしない。これは十善戒の中にある「不瞋恚(ふしんに)…他者に対して害心を持たない」を教えている都合上仕方ない、というのもあるが、仏教徒としてのポリシーの一つとして実践している。自分が怒りに支配されている状態で生徒を指導すると、生徒に変なスイッチが出来る。この程度の怒鳴られ方ならまだ大丈夫、という考え方になる。ほかの厳しい先生の怒鳴り具合、怒り具合と比較しながら。これでは、厳しく怒鳴られるから黙る、というスイッチが出来てしまう。「なぜいけないのか」ということは学ばない。授業中に私語するのも、学校を遅刻するのも、「なぜいけないのか」ということを分かってもらう。授業中に居眠りすることが、どれだけ自分にとって損であるか、など。とはいえ、各クラス1単位の授業である関係上、指導について効果が出ているか、判断が難しい部分もある。ただ、アンケート結果で見てみると、一応「生徒を上手く注意できている」という項目について評価をする生徒が多くなってきている、という事実もある。

今年から弟に少し授業をもってもらっているが、この「怒りの心を使わない」という点は共有してもらっている。怒りにまかせて何かをするな、と。これは酒に酔っているのと同じ状態。なので、授業中に無闇に生徒を恫喝しない。ただし、叱ることはある。冷静な状態で、生徒のためを思って「叱る」のと、怒りと感情に任せてただ大きな声で「恫喝する」というのには大きな差があると考える。これは、仏教徒としての意見。

○最近した話
一年生の授業で神道の話をした。神道では、天照大神が日本全体の守り神としている。一柱の神が全国を見るのが大変なので、各地域、各一族の守り神様が別にいる。これを産土神や氏神と言い、こうした各地域の神様の下で育った人々を氏子という。両者は「守る」「まつる」の関係にある。氏神は氏子を守り、氏子は氏神をまつる。祭りとは、氏子が氏神をもてなし、喜ばせるために行う。「まつり」とは「待つ」「待っている」ということ。良い神様を迎え、もてなすのが「まつり」。正月も「まつり」の一種。新しい歳神様を迎え、もてなすために、大掃除をして家と体を清め、門松を飾り、鏡餅をお供えする。昔から、日本では人が神様に成る国。日本では、人が死んで100年たつと御魂(みたま)上げといって、神様に格上げされた。その風習は今でも仏教と習合し、回忌法要として残っている。氏神はご先祖様の集まり。氏神がなぜその地域に住む人間を守るのか。そう見ていくと分かる。親が子どもを守るのに理由はいらない。孫や子供を見守るような感覚で、ご先祖様達が守ってくれているのだという信仰が、神道の中には生きているのだ、という話をした。



(インタビュー後記)
インタビューの最中は常に笑顔で穏やかな話しぶりが印象的でした。また、一つ一つのことを丁寧に説明され、すべての話しが論理的で問いと結論が筋道だっていてわかりやすいです。ご自身のことについて伺いますと、「寺の息子は、子供の頃は仏教に対して反抗的であったり、宗教を嫌いになる場合が少なくない。自分は、やはりその反動で大学時代は西洋哲学の方にいった。なので、論理や哲学というものには強い関心をもった。しかし、結局、自分の求める答えは実は仏教にあることに気づき、高野山に行った。」ということでした。論理と人生の寄り道、状況への柔軟な対応と「怒らず」の精神が魅力的な授業の秘訣のように感じました。

2011年11月1日火曜日

教師たちのネットワーク

このブログをご覧になっている先生は、学校外にどのようなネットワークをもっていらっしゃるでしょうか。部活動でのつながりや大学時代のネットワーク、そうした交流は人事異動の少ない私学では新しい考えをもたらす源泉として欠かせないものだと思います。
広島で、国語の先生がたが学校を超えて研究会をされていることをご存じでしょうか。

その中心となっていらっしゃるのが広島国際学院高等学校の那須先生です。
那須先生は、ご自身の担当クラスで偏差値と進学実績を高め、
20代の若さで国語科の教科主任として国語科全体の授業アンケート結果を飛躍的に押し上げるというリーダーシップも発揮されています。
その那須先生のブログを拝見しますと、広島で研究会を開催されているということでした。
ブログから、その時の熱い様子が伝わってきます。
ぜひ一度ご覧ください。

那須先生のブログ 
http://www.gto-nasu.com/?p=3


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記事の内容(写真は割愛しています)




志桜塾 夏季特別講座 番外編です。
(本人の強い意向で、本名公開です!)


この度の特別講座には、その他の学校の先生方も参加されていました。その中でも、もっとも「熱苦しく」、インパクトのあった先生は、広島崇徳高等学校の 岩田行展 先生です。


岩田先生との出会いは、3年前。広島での「論理エンジン」研修会でした。
私が講師として「論理エンジン」の教材と大学入試問題との関連や日々の教材研究の話をしました。講演後、クーラーのガンガン効いた室内でありながら、汗びっしょりの岩田先生と名刺交換したのが、昨日のようです。


その後、広島で「熱い国語教師の会」を立ち上げようという話になり、ベネッセグループのラーンズさんの後援を得て、昨年7月と今年4月に研究会を開催しました。


 ★昨年7月の研究会。発表者が私。もちろん、岩田先生も来ています!


4月は、発表者が岩田先生、そして、助言指導者が志桜塾代表になりたてホヤホヤの長谷先生でした。
古文の文法の指導方法を発表された岩田先生です。もちろん、汗だくです。


 ★発表中の岩田先生。(となりは、長谷先生です。)


しかし、緊張のあまり、アフロヘアーにサングラスの管野先生にも気づかず…。いろいろな先生から厳しい意見が出ました。


帰りの車の中、悔しさで涙する岩田先生に、「これがスタートだ! 今日の発表、ありがとう」と、モーツアルトの「からす麦の焼きたてクッキー」をプレゼントしました。
覚えていますか?


あれから4ヶ月。
「長谷先生の志桜塾夏季特別講座に行きたい!」と深夜に岩田先生から電話が…。
本当に嬉しかったです。


「志」高く、生徒と向き合い、その中で自らを磨く。
それこそが、私たちの「使命」ですよね、岩田先生?

夏期教員研修

みなさんの学校では夏休みにどのような研修会をされているでしょうか。
私たちがたびたび講師としてお招きしている開智高等学校の加藤先生のブログで、刺激的な研修会の様子が掲載されていましたのでここでご紹介させていただきます。
加藤先生のブログでは写真付きで、より臨場感のあふれる記事となっています。
他にも授業改善のヒントがたくさんありますので、ぜひご覧ください。

また、ご自身でブログを立ち上げておられる先生や、お勧めのブログがありましたら、
コメントにアドレスを残していただければ嬉しいです。

加藤先生のブログ 「アルペジオ」
http://www.kato-katsumi.net/

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夏期教員研修に関する記事(ブログの記事を引用しています)



今年度の夏期教員研修の第1日目が終了しました。

今回の研修テーマは「学びあい」です。
開智高校では数年前から本格的に「学びあい」をいろいろな授業に
取り入れており、今日の研修では2学期に行う「学びあい」について
個人レベルと教科レベルとで立案・発表・研究を行いました。

日ごろから相互授業参観などで他教科の先生の実践を見せていただくことも
多いのですが、いくつもの教科が集まって発表・研究する機会は
それほど多くないので、とても勉強になります。

今回は特に「学びあいのプランニング」に焦点化しました。私のほうから
「プランニング」のタスク・ブレイクダウンの基本ルートを紹介させていただき、
それに沿った形で、各先生に策案していただいたのですが、日頃から
「学びあい」を積極的に取り入れている先生方にとっても、別な切り口を
発見していただけたようで、実りある研修とすることができました。

明日は会場を開智未来中学・高等学校に移し、本学園の
総合部(小1からの12年一貫教育部)
中高一貫部(中1からの6年一貫教育部)
高等部(高1からの3年間教育部)
そして開智未来中学高等学校との
コラボ研修です。
ここでは授業参観と研究協議会を中心とした研修を行ってきます。


夏期校内教員研修の2日目が終了しました。

本日は開智未来中学高等学校(埼玉県加須市)が会場です。
開智未来中学高等学校は、本年4月に開校したばかりの、
開智学園の中では最も新しい学校ですが、
未来という言葉が表わすように、次代を担う子供たちに最先端の
教育メソッドを取り入れ、指導しています。

未来メソッドは受け売りではなく、校長(関根均先生)が開発した
「学びのサプリ」を基盤に成り立っています。
また、『論理エンジン』も中学校・高校の両方で導入しています。
中学校では『システム中学国語』も併せて取り入れています。

いよいよ、学園の専任教員、約250名が一堂に会する、
年間2回行われる、大規模な研修がスタートしました。


本日の研修は、午前中に研究授業参観、午後は校長による「教えのサプリ」
および、教科別研究協議といった内容です。

国語科の研究授業では、中学校・高等学校ともに『論理エンジン』をベースとした
授業が行われました。



未来中学高等学校の国語の授業は、上の写真にもあるように(※割愛しています)、
基本として「生徒が」授業を進めていきます。
また、複数クラスを合併して行ったり、学びあいが効果的に進むように、
通常教室ではなく、小ホールタイプの教室で日常的に授業が行われます。

教科書を単元進行で教えていったり、『論理エンジン』をドリルのように
教えていくといったことは全くありません。

これは私が勤務する開智高校(高等部)でも同様ですが、『論理エンジン』
によって「日常生活に困らない程度の日本語力」からの「意図的な脱却」を
徹底的に指導しながら、論理的思考力・判断力・表現力を、いろいろな
角度から育成できるような「自校開発プログラム(教材)」に沿って、指導
しています。

私は中学生に対する指導経験が乏しいので、特に中学部の授業は発見が
多く、とても勉強になりました。
中学生は、高校生に比べて論理のとらえ方に緩い面がみられたり、
日常言語による文意把握に流れてしまうような面は、当然あるのですが、
一方で、のびやかな思考ができるので、学びあいも活発で、
教師が気付かないような発見をする生徒がいたり、大人とは違った切り口から
発表をしていく生徒がいたりと、実に多彩です。

中学生の持つ可能性の豊かさに感動するとともに、それを着実にサポートし、
伸ばしてこられたH教諭の指導力の素晴らしさにも感動した授業でした。


2日目の午後は開智未来中学高等学校の関根校長による
「教えのサプリ」講座です。

「よく教える者は、よく学ぶ者である」との理念のもと、
学園の教師約250人が15歳になったつもりで授業を受けました。



「自分の授業の「よいところ」を3つ挙げてみましょう」
「自分の「授業に対する信念」を具体化してみましょう」

これらの問いかけに、多くの教師が一瞬戸惑います。

自分の授業の良いところが3つ挙げられない。
自分の信念を言葉にすることができない。

関根校長から容赦のない指摘が飛びます。
「みなさんは自分の授業の良いところをわかっていないのですか?」
「信念のないままに、生徒に向かっているのですか?」
「信念がなくて、よく教壇に立っていられますね!」

一つ一つの言葉がとても勉強になります。

教員研修の難しさは、「教師は学ぶ姿勢をとりにくい」ことにあります。
学ぶことの大切さはよくわかっていますが、日常的に
「教える側」になっている者にとって、「教わる側」に心から身を置くことは、
なかなか難しいことのようです。

私も毎月1回、高等部の教員対象の教員研修を行っていますが、
このことは強く感じてしまいます。

今回の研修でも冒頭で、教師に「聞く姿勢」を取らせるために
いろいろな取り組みがありました。
また、研修にも多くの「学びあい」の場面が取り入れられました。

授業後の先生方の表情を見ると、一様に爽やかで、達成感のある
顔をしていました。
関根校長の狙いは十分達成されたようです。

2日目、関根校長の講座のあとは、教科ごとに分かれての研究協議会です。

午前中に行われた3コマの授業
・中学1年生と高校1年生の『論理エンジン』をベースとした現代文の授業
・高校1年生で行われた古典の授業
を題材に協議を行いました。

古典の授業では「助動詞の学習」が取り上げられており、協議会では国語教師の
共通の悩み…「古典文法の知識の定着と運用能力の向上をいかに実現するか」
という点について意見交換がなされました。
今回の研究授業では、一般的に知識の習得段階で用いられる小テストや繰り返し
学習ではなく、「ペア・ワークによる暗誦」が取り上げられ、この方法が一定の効果を
もたらすことが確認されました。




現代文の授業では『論理エンジン』をどのように教材化して使っていくか、あるいは
「学びあい」の効果的な実践のあり方などについて意見交換しました。

今回の中学生の授業では、「おもちゃについての説明文を書こう」という
未来中学独自教材が取り上げられました。
これは、生徒一人ひとりが、同じおもちゃについて
「①幼稚園児に向けて」「②中学生に向けて」「③大人に向けて」
の3パターンの説明文を書き、それを相互に評価し構成しあうことによって
「わかりやすい(=論理的な)文章とはどういうものか」
「相手を意識した(=他者意識を持った)文章にするためには」
といった、現代文学習の重要項目を「学びあい」の中から発見させていこうと
する取り組みです。

協議会では教材開発のポイントや、「学びあい」に取り組ませるうえでの留意点
などが話し合われ、実践可能なプランもいくつも出されました。


…このようにして、教員研修2日目もあっという間に過ぎていきました。
学期が始まるとなかなか落ち着いて「自分の授業を振り返る」ことができない
我々にとって、実りある研修になったと思っています。

わが高等部は、昨日9月2日からフルスケールでの授業が開始されています。
また、来週からは校内にある宿泊学習棟を使った「秋期勉強合宿」がスタートします。
この模様について、次回からレポートしたいと思います。