2012年7月6日金曜日

最後に残る(受け継がれる)のは「想い」と「実践」

たいへんお世話になった先生が5月にお亡くなりになったことを今日お聞きしました。


感性が豊かで見識のたいへん深い先生であられました。
学校のさらなる発展に多大な貢献をされ、地元地域の方からも愛された先生でした。
先生の純真で熱い想いが感性と見識を稀有のものにしていったのではないかと私は勝手ながら想像します。
私どもの研修の講師としてお願いしようと思っていたのですが、それが果たせませんでした。
でも、そのご見識と示唆に富んだお話を先生のブログにみることができます。
教育に携わるもの(教員、親)すべてが持つべき「心構え」「感性」「実践」がここにはあります。


井上需弌先生 校長のブログ
http://seiko-top.jugem.jp/
より、以下に1話だけ転載させていただきます。
ブログを始められた最初のお話です。



鶴になった男の話
  ずいぶん前の話なりますが、転寝から覚めると、「鶴になった男」というNHKのドキュメンタリー番組が放映されていました。「鶴の訪れる村で、親鳥に見捨てられた卵を拾い、男はそれをまるでわが子のように慈しみ育て上げて自然に返す」という話なのです。つい見入ってしまい、何とも言えない感動と同時に、たくさんのことを考えさせられ、教えられました。
 この「鶴になった男」は、孵卵器で卵をかえすとき、卵のどの部分にも均等に熱が行き渡るように、卵に印をつけて三分の一ずつこまめに向きを変え、夜も眠らないでかかわり続けていくのです。これは「転卵」と言われる行為なのですが・・・。実は野生の鶴は、自分のくちばしでそれをやっているのです。一つの生命を生み出し、育てていくために自然が与えた知恵と言えばそれまでですが、こんなところから子育ては始まっているのです。やがて、卵の中でひな鳥が育っているのが確認できると、殻の外から声をかけ、やさしく話しかけます。そうすると、驚いたことに卵が話しかけに応えて動くのです。
 そう言えば、人間もおなかの中の子供に声をかけ話しかけるとよいということを聞いたことがあります。これも、子供を健やかに育てる第一歩と言えるのでしょう。
 「鶴を育てる男」は、やがて成鳥になるまで鶴の親がするのとまったく同じように、餌の食べ方・とり方を教え、歩くことや危険を教え、飛ぶことを教えるといった具合に、絶えず成長に応じてかかわり続けていくのです。そして、ひな鳥もそれに見事に応えていくのです。こうした営みが少しでもいい加減になると、ひな鳥はたちまち死んでしまうからです。
 飛ぶことができない人間が、ひな鳥に「いいぞいいぞ!」「そうだそうだ!」など、ひたすら声をかけ、汗だくになりながら両手をまるで翼のようにして走る。ひな鳥はその真似をして男の後を追いかける。これを幾度となく繰り返しているうちにやがて鶴は大空へと舞い上がる。胸が詰まる何とも心打たれる寝覚めのひとときでした。



井上先生、ご冥福をお祈り申し上げます。



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